まちを通る風を感じて

防災・復興まちづくり研究者,市古太郎のBlog

東京圏の震災リスクに関する実態論と修復型計画論の再構築に向けて

 表記の論考,都市計画学会の学会誌380号(Vol.75, No.3)特集「東京圏にみる大都市への集積に関する考察」に執筆させていただきました.

東京区部の木造住宅密集地域の縮小と人口増大,そのファクトが意味する「木密での」ジェントリフィケーションから,「木密ジェントリフィケーション」を都市計画の理論として考察し,修復型計画論のステップアップの方向性について私見を述べた.

 本論考は,東京区部周辺地域(山手線のアウターエリア)の都市計画研究でもあり,2024年11月の都市計画学会での論文発表「東京の木造住宅密集地域の縮小と『整備地域』に関する実態考察」からの展開でもありました.当時の本Blogにも下記のように記載してあります.

加えて,重鎮の先生から,

貴論文も指摘されていた「木造住宅の良さや路地の雰囲気を 残したまちとして再生」(東京都の都市づくりグランドデザイン)を、具体化する動きはあるのかしら、あるとしたら、どのような方向へなのか

 という質問もいただきました.大変に励まされるコメントでもあり,

計画論として,現場で,学術として,という趣旨と理解もいたしました.そういう点では,一番に取り組みたいと思っている,市古の研究テーマ,でもございます.ジェントリフィケーションなのか,城所先生の言う「ネオリベラル都市」という解釈が当てはまるのか,引き続き研究として,継続できればと思っています.

 と会場でも応答させていただいた,そこからの続編です.

 2026年度前期の東京都立大学都市政策科学科での演習型授業「大都市計画論」では,東池袋四・五丁目を対象に,豊島区役所,サンシャインシティ株式会社様の協力とセミナー&ディベートを通して,実態論としての「木密ジェントリフィケーション」の洞察と同時に,その計画論としての「木密エリアマネジメント」について,フィールドツアーも踏まえて,考察を深めています.

 

・市古太郎(2026)東京圏の震災リスクに関する実態論と修復型計画論の再構築に向けて都市計画,No.380,Vol.75,No.3,p.34-37

 

tmu-drlab.hatenablog.com

能登半島地震における工藝的復興に向けたクロストーク

 能登半島地震に対して,2004中越地震,2011東日本大震災,2016熊本地震,2019台風19号とも相違する(と言っても,それぞれの災害ごとの「相違」はあるのですが),自分の研究人生においても,大変に転機となる現場や示唆を多く,いただいています.

 益邑明伸さんと進めている能登半島地震復興に関する共同研究の一環としての連続勉強会第三回を「工藝的復興」として,同じく2024能登半島地震を契機に継続的に意見交換をさせていただいている松田真希子さんも交えた3人でのクロストークを開催しました.

 松田真希子さんは,金沢および能登にもご縁が深く,また社会言語学の視点から(市古の印象では文化人類学に近い),能登半島地震の復興研究のコア概念を示唆いただいているように感じています.

 連続勉強会第三回の主査として,次のようなまとめをさせていただきました.

 

 勉強会第三回は「工藝的復興」をテーマとしました.輪島塗,珠洲焼,和ろうそくといった伝統産業の回復を意味しますが,それに留まらず,伝統産業が有する,地域の歴史・自然・文化との一体性・循環関係の回復,に着目する復興理論です.一方「工藝的復興」は,体系化途上であり,今回の対談を通して,次の4点,今後につながる知見となりました.

  1. 直後期に必要な「被災者支援」から被災地外を含む他者との「豊かな関係性」への構造転換へ
     「被災者にならないことが大事」と話す能登の工藝家も紹介されました.発災直後期のインフラ途絶,物資不足事態に対する被災者支援は不可避ですが,発災からの経過の中で,なりわいに関する主体的な回復への営みに支援者側が触れることで,豊かな関係性に構造転換していく,そのような現場から「工藝的復興」が発想されてきたと言えます.
  2. 近代復興に市民主導の復興営為も合わせた「第三の道
     討論では,公共事業による「近代復興」と市民主導の工藝的復興との相違について,近代復興を否定するのではなく,市民主導の復興営為も合わせたハイブリッドの「第三の道」を考究する方向性が示唆されました.
  3. 「切断」に対する再接続と工藝的復興
     松田先生は能登半島地震フィールドワーク報告として「切断」を語りました.これはライフラインや道路網の直接被害としての「切断」に加えて,着物小物に関するボランティア現場における「記憶の切断」を危惧された言葉でもあります.そして討論を通して,発災前から「切断」は進んでいた,地震で「切断」が顕在化された,復興において,何が切断されたのか,丁寧に読み解くことで,単なる再接続でない,持続性ある「接続」をめざすことも工藝的復興の可能性ではないか,と語られました.
  4. 事前復興と工藝的復興の親和性
     事前復興は,被災地の経験から学ぶことで体系化されてきました.地域協働復興と「第三の道」は接点も多く,能登半島地震復興を工藝的復興として考究していくことは,事前復興の視点から能登半島地震復興を学ぶ,ことにもつながるように思います.

 クロストークを終えて,しっかりと情報発信をすべく,出版企画も進めています.2026年の大きな仕事になりそうです.

 

「聞く技術」から構築する人と自然の物質代謝の里山・里海復興計画考

 2025年度建築学会大会学術研究協議会「SDGs における⾃然・建築・まちづくりの融合デザイン」への寄稿として,2024年能登半島地震について,1年半の復興フィールドワークを元に報告文を執筆してみました.

 輪島塗塗師の赤木明登さんとの対話から,復興まちづくり計画の方法論として創発段階の「聞く技術」 を説明し,K 集落での発災後の回復に向けた地域の営み観察と対話を通して,

 能登半島地震からの復興とは,里山・里海集落を背景に,震災に伴う人と自然の物質代謝の亀裂を埋め,その『豊かさ』を回復していくことにあるのではないか

 現時点では,大変なる稚拙さを承知で,それでもこれまでの30年にわたる国内外の災害復興調査経験からも感じられる印象を書かせていただきました.

 現地での本当に多くのみなさんとの出会いと対話への感謝を強く感じつつ,研究室として,しっかりと学術報告へ,復興学への貢献へ,そして東京の事前復興まちづくりへの考察へ,研究を進めていきたいと思っています.

・市古太郎(2025)「聞く技術」から構築する人と自然の物質代謝の里山・里海復興計画考-2024 能登半島地震からの里山・里海集落復興を組み立てる-,2025年度建築学会大会学術研究協議会「SDGs における⾃然・建築・まちづくりの融合デザイン」,pp.48-51

東京都事前都市復興訓練2025に従事いたします

 東京都の都職員および区市町職員を対象とした「都市復興訓練」.1998年以来,27回目の開催ですが,光栄なことに,今年度も従事させていただく機会をいただきました.

 7/29の「補講」を踏まえて,8/6からは都職員の「広域都市復興訓練」に従事,9月は区市町職員対象で「復興まちづくり方針」を作成編集する「都市復興訓練」も予定されています.

 直下型地震被害想定を地理的空間に即して理解する.既存の都市防災計画,都市計画事業を把握した上で,直下型地震シナリオを組み込んで,対象地域の将来像を考える.東京都の事務局も相当な準備と資料作成,また訓練プログラムも充実しており,参加職員もその緊張感に圧倒されつつ,集中して震災復興まちづくりについて考え,復興対応力の強化に結実しているように思います.

 直近で,都市計画学会誌にも「東京都の都市の事前復興の取組み」について,記事を書かせていただきました.よろしければ,ご覧ください.

・市古太郎(2025)東京都の都市の事前復興の取組み,都市計画,No.376,p.5

事前復興計画・事前復興まちづくりと市街地再開発事業

 公益社団法人 全国市街地再開発協会の機関誌「市街地再開発」No.658号,2025年2月号に報告記事を寄稿させていただきました.
 国土交通省の「復興まちづくり計画」と東京都域での「事前復興計画」の対応関係,復興事前準備と平時の「将来の課題を見据えたまちづくり活動」(牧紀男さん)について触れたあと,1995年阪神・淡路大震災,2004年中越地震,2011年東日本大震災,2016年熊本地震の四つの震災からの都道府県単位での人口回復状況から,東京での取組みの特性を考察し,その上で,市街地再開発事業の検討が進められている地区での事前復興まちづくりの事例として,豊島区東池袋地区を,逆に,市街地再開発事業が完工した地区での事前復興まちづくりの事例として,港区白金一・二丁目地区を取り上げて,市街地再開発事業としての地域公共貢献を効果的にアピールする場として,同時に再開発事業の居住者にとって,高層集合住宅での在宅避難生活への備えとして地域とつながる場となっていることを紹介しました.
 東京区部における市街地再開発事業と事前復興まちづくり,それは,マンション防災の取組みとも親和性のある,可能性を秘めたフィールドだと,書き終えて,感じました.よろしければ,ご高覧ください.

 ・市古太郎(2025)事前復興計画・事前復興まちづくりと市街地再開発事業,市街地再開発,No.658,pp.19-25

 

 

災害研究からの「再生成型(Regenerative)」へのアプローチ

 都市計画・都市デザイン研究において,Regenerativeは「再生成型」と解釈され,議論が行われてきた.今回,都市計画学会誌でこの再生成型について特集「Regenerative Cities―場所と地球が再生成するための計画論」を編むことになり,都市計画研究+災害研究の視点から,寄稿させていただいた.
 その際,2000年代のResiliencyの学術的展開経験を個人的な下敷きとしつつ,Chrisna du PlessisとBeth Schaefer Cangliaのお2人の論考を主参照しつつ,都市計画学への示唆として5点を考察し,その5点に含まれる「聞くこと,聞く技術」から接続させて,石田頼房先生の宮澤賢治へのオマージュを元にした土地利用計画思想論,また輪島塗塗師の赤木明登さんとの交流から示唆をいただいた「聞く技術」として,理論可能性を論考してみました.
 よろしければ,ご高覧ください.

 ・市古太郎(2025)Disaster ResearchとRegenerative,都市計画372号,pp.34-37

 脱稿後,斎藤耕平さんのエコロジー論との関係性(特に「物質代謝の亀裂」)から,ハッと気づいた点もあるのですが,それはまた近々,講を立ててみたい,と思っています.

東京の木造住宅密集地域の縮小と「整備地域」に関する実態考察

 表記の題名にて,日本都市計画学会2024年度全国大会にて,口頭発表を行いました.

 1995年公表と2020年公表で,約24,000haから約8,600haと64%減少となった木造住宅密集地域を,1991年,2006年,2016年の3時点データとして,地図情報として復原し,時点間および区自治体間の変量解析を行った研究成果です.

 会場では,整備地域よりも,整備地域以外で木造住宅密集地域の減少率が高い結果であることに関連して,自然更新なのか,密集事業成果なのか,という質問も複数,いただきました.データ的には「自然更新」となるように思うのですが,この自然更新も,エリアを問わない耐震診断・耐震改修の促進などの「ナッジ」が働いた可能性もあり,引き続きの検討課題と思っています.

 加えて,重鎮の先生から,

貴論文も指摘されていた「木造住宅の良さや路地の雰囲気を 残したまちとして再生」(東京都の都市づくりグランドデザイン)を、具体化する動きはあるのかしら、あるとしたら、どのような方向へなのか

 という質問もいただきました.大変に励まされるコメントでもあり,

計画論として,現場で,学術として,という趣旨と理解もいたしました.そういう点では,一番に取り組みたいと思っている,市古の研究テーマ,でもございます.ジェントリフィケーションなのか,城所先生の言う「ネオリベラル都市」という解釈が当てはまるのか,引き続き研究として,継続できればと思っています.

 と応答もさせていただきました.

 引き続きこのテーマ,取り組んでいきたいと思っています.

 論文としては,下記になります.

 市古太郎:東京の木造住宅密集地域の縮小と「整備地域」に関する実態考察,都市計画論文集,59巻3号,pp.1525-1532,2024

 

被災地サロン活動と復興まちづくりの連携の可能性

 本Blogでは,正面からの記事投稿できておりませんでしたが,2024年1月能登半島地震について,二つの立場で調査支援活動に従事しています.第1に,都市計画学会 防災復興担当理事として,第2に,東京都災害ボランティアセンターアドバイザーの立場(同じ意味合いで,一般社団法人 災害協働サポート東京 代表理事の立場)にて,です.6/5の都立大OUの催事は,主として後者の視点からの調査報告活動でもありました.

 4回ほど現地調査に従事し,復興まちづくりの専門家として,言い換えれば,くらし・すまい・なりわい・まちの回復,という視点から現地の方々,支援に入られている方々から,話しをお聞きしたり,また5月末には,東京都能登半島地震被災者支援ボランティアプログラムに参加し,ふれあい喫茶(被災地サロン活動)にも従事させていただきました.

 集落・まち・里山・里海の復興まちづくりについて,調査活動を継続中であり,後日また,まとまった報告もしたいと思っています.

 今回,主として第2の被災者支援の活動視点から,第1の復興まちづくりへの連携に関する考察をまとめてみました.8/27の日本建築学会大会都市計画部門研究協議会への寄稿論文として投稿しました.こちらでも公開いたします.適宜,ご意見,ご感想,いただければ幸いです.

・市古太郎(2024)被災地サロン活動と復興まちづくりの連携の可能性-能登半島地震での活動参加も踏まえて-建築学会都市計画部門研究協議会「能登半島地震復興」

 

催事案内(6/27):能登という器の破壊と再生-その工藝的なあり方について-

 輪島塗の塗師の赤木明登さん,服飾デザイナーの堀畑裕之さん,関口真希子さんをゲストとして,工藝という視点から,能登半島地震の復興を考えます.もともとは,都立大学の松田真希子先生から「金沢大学時代から交流のあるお三方と能登半島復興応援トークイベントをしませんか」というお誘いから始まった企画でした.

 赤木さん,堀畑さんの新刊『工藝とは何か』を,また赤木さんの『21世紀民藝』を読ませていただき,また5/15の東大駒場での

トークイベント「美意識と手仕事――映画『うつろいの時をまとう』と書籍『工藝とは何か』をめぐって」@東京大学 言語情報科学専攻

 に参加させていただき,市古としても大変に感じる点があり,当日は「クロストーク」という方法論で,工藝×復興について考えてみたいと思います.

 6/15に金沢市で開催された都市計画学会の能登半島地震復興討論会でも,能登半島地震において風景論がもつ意味,「べき」論とは対極にある「風景論」からのアプローチ,命じる技術と聞く技術,といった,6/27に向けて意識していた論点が重なり合って浮かび上がってきたこと,大変に興味深く感じていました.加えて,東京都×東京ボランティア市民活動センター(TVAC)×災害協働サポート東京(cs東京)が実施している東京都能登半島地震ボランティアプログラムでの現地でのリアルにもつながる点があります.

 6/27(木)の16:50から19:00まで(16:30-16:50での都立大学生サークルの能登半島地震ボランティアの報告会があります),東京都立大学南大沢キャンパス1号館120教室にて,です.当日参加もウエルカムですが,できれば,事前登録いただければ幸いです.

 

 

催事案内(6/5):市⺠協働社会から考える東京の防災

首記の講座を,東京都立大学オープンユニバーシティ講座×特別区プレミアム講座,として準備しています.企画主旨として,

東京における平時からの災害ボランティア活動について,その担い手の視点からの話題提供を行います.地域の中間支援団体であり,災害ボランティアセンターの設置運営を行う社会福祉協議会の立場から,また被災地で被災者支援民間組織が果たす役割,「災害時のための市民協働東京憲章」を基軸とした東京都域の市民防災の取組みについて,現場の知を共有し,その後,会場も交えて,ディスカッションを行いたいと思います.非日常時を考えてみること,自分の身の処し方を想像してみることは,「東京23区のいま(=日常)を考える」ことにつながってくるように思います.

です.NPO/NGO社会福祉協議会,中間支援団体のお立場から被災地の現場,そして東京の市民防災を担われてきた,お三方と深めていきます.昨年末の企画提案時点では,能登半島地震の前でしたが,講座当日は,能登半島地震でのボランティア活動も踏まえて,話題提供とディスカッション準備を進めています.

申し込みは,都立大学オープンユニバーシティから,どうぞ.

https://www.ou.tmu.ac.jp/course/detail/7271